格安SIMにもいろんなタイプがあります。インターネットサービスプロバイダが運営するブランド以外にもケーブルテレビ事業者や電力会社、それに流通大手など意外な企業が提供していたりします。
「QTmobile(QTモバイル)」は九州電力グループの情報通信事業会社が運営する電力会社系の格安SIMサービス。特定地域で高い支持を得ています。
目次
QTmobile(QTモバイル)とは?
「QTmobile(QTモバイル)」は、九州電力グループの情報通信事業会社である「QTnet」が提供するスマートフォンサービス。
「QTnet」は「BBIQ」という光回線を提供している電力系通信会社で、もともと光回線のオプションとして展開されていた「BBIQスマホ」というサービスが2017年3月に「QTmobile(QTモバイル)」としてリニューアルされました。
全国的な知名度はそれほど高くなくあまり馴染みのないMVNOかもしれませんが九州地区では支持の高い地元密着型の格安SIMなのです。
月額料金や諸費用について
月額料金
「QTmobile(QTモバイル)」では「Dタイプ(ドコモ)」「Aタイプ(au回線)」「Sタイプ(ソフトバンク)」の3回線から選ぶことが可能で、それぞれに料金プランが設定されています。
また、それぞれに「データ+通話コース」と「データコース」の2種類があり提供されるサービス内容が異なります。
電話もネットも利用するのであれば「データ+通話コース」を選ぶことになりますね。おそらくほとんどの人がこちらを利用するのではないでしょうか。
■データ+通話コース
電話(音声通話)とデータ通信(ネット接続)の利用が可能。
■データコース
データ通信(ネット接続)のみ利用可能。電話(音声通話)は使えない。
■Dタイプ、Aタイプの月額料金
「Dタイプ(ドコモ回線)」「Aタイプ(au回線)」は基本的に料金プランの内容は同じで月額料金は以下のようになっています。
データ容量 | Dタイプ | Aタイプ |
2GB | 1,100円 | 1,100円 |
3GB | 1,540円 | 1,540円 |
6GB | 1,760円 | 1,760円 |
10GB | 1,980円 | 1,980円 |
20GB | 2,200円 | 2,200円 |
30GB | 3,300円 | 3,300円 |
■Sタイプの月額料金
ソフトバンク回線を使った「Sタイプ」だけは料金プランの内容が若干違います。3GB~30GBまでのデータ容量の設定は同じですが、2GBのプランがなく代わりに1GBのプランが用意されています。
また月額料金も「Dタイプ(ドコモ回線)」「Aタイプ(au回線)」とは違い以下のようになっています。利用開始月~6ヶ月目までと7ヶ月目以降で料金が異なるのが大きな特徴ですね。
データ容量 | 利用開始月~6ヶ月目まで | 7ヶ月目以降 |
1GB | 1,254円 | 1,870円 |
3GB | 1,364円 | 1,980円 |
6GB | 2,134円 | 2,750円 |
10GB | 3,234円 | 3,850円 |
20GB | 5,379円 | 5,610円 |
30GB | 7,579円 | 7,810円 |
3回線を比較すると「Dタイプ(ドコモ回線)」「Aタイプ(au回線)」の方が「Sタイプ(ソフトバンク)」より割安になっているのが分かりますね。
また、下記はサブブランドも含めた格安SIM各社の料金プランにおいて、データ容量別の月額料金の一覧をまとめた記事です。「QTmobile(QTモバイル)」の月額料金が他社と比較してどの程度なのかというのが分かるかと思いますので参考にしてください。
諸費用について
初期費用
「QTmobile(QTモバイル)」の「データ+通話コース」の初期費用は以下のようになっています。
■契約事務手数料
3,300円
■SIM発行手数料
375.1円
解約時にかかる費用
「QTmobile(QTモバイル)」の「データ+通話コース」の解約時にかかる各種費用は以下のようになっています。
「データ+通話コース」は契約のタイプに応じて最低利用期間があり経過期間に応じた契約解除料が発生します。なお「データコース」の場合は契約解除料は発生しません。
■最低利用期間
あり
■契約解除料
【Dタイプ】
利用開始月を含む12ヶ月間の最低利用期間があり経過期間に応じた契約解除料が発生する。
0ケ月:13,200円
1ケ月:12,100円
2ケ月:11,000円
3ケ月:9,900円
4ケ月:8,800円
5ケ月:7,700円
6ケ月:6,600円
7ケ月:5,500円
8ケ月:4,400円
9ケ月:3,300円
10ケ月:2,200円
11ケ月:1,100円
12ケ月:0円
【Aタイプ】
利用開始月を含む13ヶ月以内:10,450円
利用開始月を含め14ヶ月以降:0円
【Sタイプ】
利用開始月を含む13ヶ月以内:10,450円
利用開始月を含め14ヶ月以降:0円
■MNP転出手数料
WEB:0円
電話:1,100円
また解約後は契約のタイプに応じてSIMカードを返却する必要があります。
■Dタイプ
要返却(返却先:QTモバイルDタイプ解約受付センター)
■Aタイプ
返却不要
■Sタイプ
要返却(返却先:QTモバイルSタイプ物流センター SIM返却係)
データチャージ
多くの格安SIMでは、料金プランにおける月間のデータ容量を使い切ってたとしても「データチャージ」を行うことでデータ容量の残量をチャージ(増量)することができます。
「QTmobile(QTモバイル)」の料金プラン「データ+通話コース」「データコース」も 「データチャージ」(QTmobileでは「データ容量追加」と表記されている)を行うことが可能で、その料金は以下のようになっています。
■Dタイプ
220円/100MB
■Aタイプ
165円/100MB
■Sタイプ
220円/100MB
990円/500MB
1,760円/1GB
料金プランの特徴
ソフトバンク回線はおすすめではない?
「QTmobile(QTモバイル)」はドコモ回線、au回線、ソフトバンク回線の3回線全てに対応しています。契約する場合は「Dタイプ(ドコモ)」「Aタイプ(au回線)」「Sタイプ(ソフトバンク)」のいずれかを選ぶことになります。
大手通信キャリアから格安SIMに乗り換えをする場合、のりかえ先の格安SIMが採用しいてる回線によってはスマホのSIMロック解除が必要となります。
例えばドコモから乗り換える場合、乗り換え先の格安SIMがau回線のみ採用しているのであればドコモのスマホに対してSIMロック解除をしなければなりません。
しかし「QTmobile(QTモバイル)」の場合はドコモ、au、ソフトバンクの3回線に対応しているので、ドコモ回線を選ぶことでSIMロック解除することなくドコモのスマホをそのまま使うことができるのです。
※機種によっては同じ回線でもSIMロック解除が必要な場合があります。
ただし、ソフトバンク回線はどうもそれほどおすすめではないようです。
こちらは「QTmobile(QTモバイル)」からのアナウンス。
QTモバイルでは、Android端末においてはドコモ回線またはau回線のいずれかで、お客さまの通話・データ通信環境をご提供しております。これは、QTモバイルにご契約後の話であり、現在のご契約はどこの会社でも問題なくご利用いただけます。
QTモバイル 公式HPより引用
またソフトバンクは、ドコモと同じ通信方式を利用していますので、今の端末をそのままQTモバイルでご利用になりたい場合は、ドコモ回線をお選びいただくことをお勧めいたします。
「QTmobile(QTモバイル)」ではAndroid端末で乗り換えする場合は「Dタイプ(ドコモ)」「Aタイプ(au回線)」から選択することになるようです。ソフトバンクからの乗り換えの場合は、どちらかというと「Dタイプ(ドコモ)」の方がおすすめのようです。
iPhoneの場合は「Sタイプ(ソフトバンク)」を選ぶこともできるようですが「月額料金や諸費用について」でもお伝えしたように月額料金が高いので、やはり「Dタイプ(ドコモ)」「Aタイプ(au回線)」から選んだ方がよさそうですね。
余ったデータ容量は翌月に繰り越し
「QTmobile(QTモバイル)」ではプランに基づくデータ容量を当月に使い切れなかった場合、余ったデータ容量は自動的に翌月に繰り越されます。
例えばデータ容量6GBのプランにおいて、当月4GBのデータ通信量を使用して2GBが余った場合、翌月は8GB(2GB+6GB)を使用することができます。
なお、チャージしたデータ容量の利用期限は契約のタイプによって異なり、消費される順番も変わってきます。
利用期限
■Dタイプ
3ヶ月後の末日まで。
■Aタイプ
翌月の末日まで。
■Sタイプ
3ヶ月後の末日まで
消費される順番
■Dタイプ
利用期限の早いものから消費される。
■Aタイプ
利用期限の早いものから消費される。
■Sタイプ
前月繰り越し分、月間のデータ容量、チャージ分の順で消費される。
データ容量超過時の通信速度
「QTmobile(QTモバイル)」では当月のデータ容量を使い切った場合、通信速度に制限がかかります。制限は契約タイプによる違いはなく、いずれも最大200kbpsでのデータ通信となります。
この場合、チャージ(データ容量の追加購入)を行うことで通信速度制限は解除され高速データ通信が回復します。
節約モード・高速モードの切替は不可
格安SIMには「高速モード⇔低速モード」のようにデータ通信において通信速度を自由に切り替えることができる機能を提供しているブランドもあります。
これは、いわゆる「低速モード」でのデータ通信には通信速度に一定の制限をかける代わりとしてデータ容量を消費しないというサービス。そのため「節約モード」という呼び名でも知られています。
SNSなどあまりデータ通信量を必要としない場合には「低速モード」を利用することでデータ容量の消費を防ぐことができるというわけです。
しかし、残念ながら「QTmobile(QTモバイル)」では「高速モード⇔低速モード」の切替ができるサービスは提供されていません。
かつてはDタイプ(ドコモ回線)において「QTモバイルDタイプアプリ」を利用することで提供されていたようですが、2020年2月18日(火)以降アプリのサービス停止に伴ない通信速度の切替機能の提供も停止となったようです。
※現在は「QTモバイルアプリ」を提供。
2/18(火)以降、「QTモバイルDタイプアプリ」を利用して通信速度の切替機能が利用できなくなり、 高速通信のみの取扱いとなります。
QTモバイル HPより引用
海外でのデータ通信は不可
MNOの4社(ドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイル)やそのサブブランドでは海外でもデータ通信が可能な「国際ローミングサービス」を提供しています(一部利用できないブランドもある)。
しかしMVNOである「QTmobile(QTモバイル)」では「国際ローミングサービス」の提供はないので海外でデータ通信を利用することはできません。
「QTmobile(QTモバイル)」ユーザーが海外でネット接続を行う場合、海外用のWifiルーターをレンタルしたり、現地でプリペイドSIMを購入したりするといった方法をとる必要があります。
オプションなど
通話オプション
「QTmobile(QTモバイル)」の「データ+通話コース」には以下の2種類の通話オプションが用意されています。
■無制限かけ放題
月額料金:1,600円
内容:国内通話が無制限かけ放題。
■10分かけ放題
月額料金:880円
内容:10分以内の国内通話がかけ放題。
長時間の電話をよくかける人は「無制限かけ放題」、短時間の電話を何度もかける人は「10分かけ放題」がおすすめですね。
BBIQ×QTモバイルセット割
「QTmobile(QTモバイル)」は、同じ九州電力グループのサービスと組み合わせることで割引きが適用されます。
「BBIQ×QTモバイルセット割」は光インターネットサービスの「BBIQ」と「QTmobile(QTモバイル)」をセットで利用することで「QTmobile(QTモバイル)」の月額料金が最大220円割引きされるサービス。
割引額は料金プランによって異なり、以下のようになっています。
■2GBのプラン
110円
■3GB~30GBのプラン
220円
九電グループまとめてあんしん割
九州電力を利用している方が同じ九州電力グループの格安SIMサービスである「QTmobile(QTモバイル)」を利用している場合、月額料金の割引を受けることができます。
割引きを受けるには申し込みが必要で、九州電力の「ご家庭向け電気料金プラン」を対象として「QTmobile(QTモバイル)」の月額料金から110円が永年割引きとなります。
QTモバイル×BBIQ×九州電力
上記の「BBIQ×QTモバイルセット割」及び「ご家庭向け電気料金プラン」を組み合わせると、「QTmobile(QTモバイル)」の月額料金が最大330円割引きとなります。
当然ながら九州地区では九州電力利用者が多いでしょうから、同地区においてこのサービスはインパクトがあるでしょうね。この辺りが地元密着型という強みだと思われます。
通信速度について
「QTmobile(QTモバイル)」の通信速度について見ていきましょう。通信速度については「みんなのネット回線速度」という、携帯キャリアや光回線の速度比較が出来るサイトの情報を参考にしてみます。
参考:みんなのネット回線速度(https://minsoku.net)
※「みんなのネット回線速度」にて直近3ヶ月に計測された「QTmobile(QTモバイル)」の測定結果からの平均値を参照。(2022年2月20日現在)
※「みんなのネット回線速度」における測定結果は、通信環境や時期によって結果が変わってくるので、内容についてはあくまで参考程度としてください。
下記は時間帯別の平均速度です。
※みんなのネット回線速度(https://minsoku.net/speeds/mvno/services/qt-mobile)より引用
「QTmobile(QTモバイル)」の場合、こちらのサイトに投稿される測定値はどうしても九州からの情報が多いので、そのあたりの事情を考慮していただければと思います。
下表を見ると昼の時間帯が他の時間帯に比べて通信速度(下り)が遅くなっているのが分かります。利用者の多い時間帯に通信が混雑して回線速度が低下しているのではないかということが予想されますが、この辺は格安SIMによく見られるデメリットの1つなので選ぶ際のポイントにするとよいですね。
時間帯 | 下り | 上り |
朝 | 57.53Mbps | 14.02Mbps |
昼 | 5.92Mbps | 7.35Mbps |
夕方 | 51.65Mbps | 2.7Mbps |
夜 | 50.16Mbps | 10.24Mbps |
深夜 | 226.11Mbps | 28.06Mbps |
メリット・デメリット
最後に「QTmobile(QTモバイル)」のメリット・デメリットをまとめてみました。それぞれをよく把握したうえで、自分の使い方にはメリットの方が多いのか、デメリットの方が多いのか、を検討してみるといいですね。
「QTmobile(QTモバイル)」のメリットとしては以下のような点があげられます。
- 九州電力やBBIQの利用者は割引が適用される。
- 余ったデータ容量は翌月に繰り越せる。
- 専用アプリの利用で通話料が半額となる。
「QTmobile(QTモバイル)」のデメリットとしては以下のような点があげられます。
- 九州電力やBBIQを利用していない場合それほど格安ではない。
最低利用期間、解約料がある。 - 節約モードがない。
- 低速時の通信速度は最大200kbps。
- 海外ではデータ通信が利用できない。